2025.6.26
新しい住まいを思い描くとき、私たちの頭の中は、広々としたリビングや、使いやすいキッチン、家族それぞれの部屋など、間取りやインテリアのことでいっぱいになりがちです。もちろん、それらは家づくりの中心であり、とても大切な要素です。しかし、建物が完成し、いざ暮らしが始まったとき、その家の「本当の価値」や「日々の心地よさ」を大きく左右する、もう一つの重要な要素があることをご存知でしょうか。
それが、外構、とりわけ「植栽」の存在です。
私たち玉善では、家は建物単体で完結するのではなく、庭やアプローチ、そしてそこに息づく一本一本の木々や草花と一体となって初めて「家庭」という温かい器になると考えています。だからこそ、家の設計と同時に、植栽計画も初期段階から詳細に検討し、トータルでデザインを進めていくことを大切にしています。
今回は、ともすれば後回しにされがちな「植栽」が、私たちの暮らしにどれほど多くの恵みをもたらしてくれるのか、その多面的な役割と、プロである設計士がこだわる計画のポイントについて、詳しくお話ししたいと思います。
庭の木々は、ただそこに植えられているだけではありません。実は、見た目の美しさ以上に、暮らしを豊かにするたくさんの役割を担ってくれています。
1. 我が家だけの「シンボル」という贈り物 家のメインとなる樹木、いわゆる「シンボルツリー」は、文字通りその家の象徴となります。例えば、お子様の誕生を記念して植えた木が、家族の歴史と共に少しずつ成長していく姿を見守るのは、何にも代えがたい喜びです。友人が訪ねてくるときも「あの、素敵な木があるお家だよ」と伝えれば、自慢の目印にもなりますね。 写真のような白いタイルが美しいモダンな住宅には、すらりとした株立ちの木が涼やかな印象を与え、訪れる人を優しく出迎えてくれます。建物の直線的なデザインと、植物の有機的なフォルムの対比が、お互いの魅力を一層引き立てているのです。
2. 日々の暮らしに寄り添う「癒し」という贈り物 植栽の本当の価値は、日々の暮らしの中でこそ実感できます。朝、カーテンを開けたときにリビングの窓から見える、太陽の光を浴びて輝く緑。玄関を出た瞬間にふと感じる、季節の花のほのかな香り。アプローチを歩けば、そよ風に葉が揺れる心地よい音が聞こえてきます。 こうした五感で感じる自然との触れ合いが、忙しい毎日の中に心のゆとりと安らぎを与えてくれます。植物が持つ生命力は、知らず知らずのうちに私たちの心を癒し、住まいに温かい命を吹き込んでくれる、かけがえのないパートナーなのです。
3. 暮らしを守る「機能性」という贈り物 植栽は、暮らしを快適で安全にする「機能」も備えています。 例えば、道路からの視線が気になる窓の前に、無機質な塀を立てる代わりに、枝葉が密な常緑樹を植えてみましょう。これだけで、外からの視線を柔らかく遮る「天然のスクリーン」となり、プライバシーを守りながらも、閉鎖的な印象を与えません。 また、夏の強い西日を遮るように落葉樹を配置すれば、葉が茂る夏は「緑のカーテン」として室内を涼しく保ち、葉が落ちる冬は暖かい日差しを室内に取り入れてくれます。まさに、自然の力を借りた賢いエコシステムです。
4. 夜の表情を創り出す「光」という贈り物 日中の姿とはまた違う、幻想的な表情を見せてくれるのが「夜の植栽」です。アプローチやシンボルツリーの足元にアップライトを仕込むと、光が葉を下から照らし上げ、昼間とは全く異なるドラマチックな陰影を生み出します。 写真のように、門柱や建物の壁に映る木の影は、まるでアートのよう。美しい夜の景観は、ご家族の帰りを温かく迎えるだけでなく、外からの視線を意識させることで、防犯効果も期待できます。
では、こうした植栽の効果を最大限に引き出すために、設計士はどのようなことを考えているのでしょうか。
ポイント1:建物との「バランス」を考える 植栽計画で最も重要なのは、主役である建物とのバランスです。 例えば、重厚感のあるダークな色合いの外壁や、デザイン性の高いタイルを使った建物の場合、植栽まで主張しすぎると、全体が雑然とした印象になりかねません。そんな時は、あえて高木は使わず、背の低い低木や芝生、下草などを中心に構成し、建物を引き立てる「引き算の美学」でデザインします。 一方で、シンプルな外観の建物には、個性的な樹形のシンボルツリーを配置することで、華やかさや個性を「足し算」していくのです。
ポイント2:足元に「安定感」を生み出す 普段何気なく見ていますが、プロが手掛けた外構は、高木・中木・低木・下草(グランドカバー)といった高さの異なる植物が、リズミカルに配置されています。 特に、背の高い木の根元に20〜30cmほどの低木や草花を植えるのは、とても重要なテクニック。これにより、植物全体に一体感が生まれるだけでなく、建物のコンクリートの基礎部分を自然に隠すことができます。無機質な基礎が見えなくなることで、まるで建物が緑の中からすっと立ち上がったかのような、落ち着きと安定感が生まれるのです。
ポイント3:「時間」という視点で樹種を選ぶ 植栽は、植えた瞬間が完成ではありません。5年後、10年後、どのように成長していくのかを予測して樹種を選ぶことが不可欠です。日当たりや水はけといったその土地の環境に合っているか、成長しても隣家や道路にはみ出さないか、メンテナンスはしやすいか(病害虫に強いか、剪定は大変でないか)など、長期的な視点で最適な一本を選び抜きます。 常緑樹と落葉樹をバランス良く組み合わせ、一年を通して緑が楽しめ、かつ季節の移ろいも感じられるような計画を立てるのも、設計士の大切な仕事です。
「植栽は、家が建ってから考えればいい」と思われがちですが、それは非常にもったいないことです。建物の設計と一体で考えるからこそ、窓からの眺めや、光と風の通り道、そして家全体の美しさを計算し尽くした、本当に価値のある住まいが実現します。
玉善では愛知県内に常時100棟以上の分譲住宅を販売しておりますので、玉善で注文住宅をご検討されるお客様は、リアルサイズのモデルハウスを多数ご見学いただけます。どんな場所にどんな建物があるのか、下の地域から是非チェックしてみてください!
受付時間: AM9:00〜PM6:00